現在、日本のお米の総生産量は約1千万トン。その内、魚沼産コシヒカリ総生産量はわずか6万トン程です。この、魚沼産コシヒカリと表示できる産地でも、実際に食味に関わる地域ランク(米穀データバンク公表)があり、最も美味しいお米の収穫できる特A地区に常に選定されている地域は、南魚沼市・十日町市しかありません。
その特A地区で収穫されるコシヒカリは年間1万2千トン程。殆どが新潟県内で消費されるため、魚沼特A地区のお米が新潟県外で販売されることは皆無に等しいと言っても過言ではないでしょう。ましてその地域内の農家の「純米」となれば、それはそれはお目にかかることさえできません。
また、最近「食味特A○○年連続受賞」という広告を見かけますが、これは(財)日本穀物検定協会が毎年行なう「お米の食味ランキング」で、魚沼産コシヒカリ一ブランドとしての評価となり、例えば魚沼地方で収穫されたコシヒカリであれば全部ひっくるめて「特A」となっています。しかし当店の謳う「特A」とは、魚沼に於いても、更に細分化した“地域レベル”での「特A」となり、魚沼地域内でも7段階に分けられたお米の育成に最高評価の地域で、この地域別の特Aは、全国でみても、南魚沼市・十日町市だけとなっています。(JAみなみ調べ)
ただ、現在両市とも市町村合併からその範囲が拡がってしまい、この地域で収穫されたコシヒカリ全てが魚沼産コシヒカリと謳えるのも疑問を感じますが、当店でお米の育成に最適と考える地域は、十日町市では、水沢地区信濃川沿いと旧中里村の信濃川・清津川沿い、南魚沼市では旧塩沢町の西側となり、
当店の仕入れは100%この地域で行っております。
肥料は環境や土壌によって使うものが違ってきます。「有機肥料タップリと」と謳うと、如何にも美味しそうな印象を与えますが、もともと良質な米の採れる田圃では、動物性天然有機肥料を多く使ってしまうと味が悪くなったり稲が倒れたり腐ったりしてしまいます。環境にあった肥料とミネラルや有機質が豊富な山からの自然水を使うことが大切です。
動物性有機肥料等を与える「有機米」が美味しいかと言うと、お米(稲)は有機肥料も「無機」で吸収するため、それは全く美味しさにはつながりません。
「無農薬」・「特別栽培」・「低農薬」・「減農薬」の表示についてご存知ですか? |
「特別栽培米」とは、農薬の使用量が当該地域(主に都道府県別)に於いて、慣行的(一般的)な農薬使用量の割合を『5割以下』に抑えて栽培されたお米のことで、今では表示がなくなりましたが「低農薬」・「減農薬」の表現の違いでしかありません。
ここで知って頂きたいことは、「慣行的な農薬使用量」の基準です。これは、大まかに各都道府県のガイドラインにより決められていますが、例えば、ある県の慣行栽培は農薬散布回数18回、またある県は10回のそれを基準(慣行)としています。
もうお分かり頂けたと思いますが、18回の5割以下と、10回の5割以下の農薬散布量が、同じ5割以下と見なされ、「特別栽培米」として表示・販売できるのです。
また、この「特別栽培米」とは、農薬の使用量を半分以下に抑えるのと同時に、化学肥料も半分以下に抑えないと謳えません。えぇっ?肥料は多い方が良いのでは?そう思われる方もいらっしゃると思います。
しかしそうではありません。あくまでも肥料と食味は比例せず、与えすぎると逆に米のタンパクの量が増えたり脂肪酸が増えたり、食味を落としてしまうことが殆どです。「有機肥料たっぷり米」等の広告には、くれぐれも振り回されないようにしてください。
「慣行栽培」における各都道府県での農薬使用量が異なるにも係わらず、ガイドラインに従い任意で表示できる「特別栽培米」は、実際のところ、各都道府県の一般的な農薬や肥料の量を知らないと何も分からないということです。
ここで登場したのが日本農林規格(JAS)法です。
消費者の視点から分かりやすいように、平成13年産のお米から生産農家と精米業者の双方が「JAS有機認証」を取得し、その基準をすべて満たした「お米」のみに(有機JASマーク)をつける事が出来る制度です。
生産農家が種もみの育成から化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けたお米で、JAS有機認定機関の現地調査や書類審査を受け認証されますので、現在のところこのマークがついているものは信用できるということです。なお、農薬を使用していないということではありません。
販売業者(生産者直売も含む)は必ずJAS表示をしなければなりません。
主に米袋の裏等に表示されている「産地・ 品種・
産年・ 使用割合・業者名」がそれですが、このJAS法の表示を行うためには、食糧事務所などでお米の検査を受けなければなりません。しかしこの表示には「等級」の記載欄がなく、粒の揃った一等米でも斑点米や割れた粒が混在する2等米や3等米でも、その表示は同じになります。
ちなみに、当店では“一等米”のみを取り扱っていますが、といいますか・・・当店の仕入れ地域の生産者の90%以上は殆ど毎年どの農家も一等米を作りますので、逆に今まで仕入れ農家で「今年は二等米だったよ」というお米に出会ったことがないのが現状です。
それも、色彩選別機で斑点米等を排除するJA等での一等米とは異なり、農家の純米そのままで検査一等米ですから、如何に生産者のレベルと環境レベルが高いかが窺えるかと思います。
何はともあれ、曖昧な表示、中途半端な広告では消費者は混乱するだけです。消費者は最終的に信頼できる業者や生産者からのお米をお選びいただきたいと願っています。
山間部の魚沼産コシヒカリは旨味成分が中までギッシリ! |
魚沼産コシヒカリは、旨味成分が多く含まれている糠の層が胚乳部に、霜降牛肉のように深く入り込んでいる事が美味しさの大きな要素となります。2003年に行われた研究によりますと、糖層の状態は山地や気候によって違う事が分かり、山間地の良質米といわれる米ほど糖層が根を生やしたように胚乳部に食い込んでいます。
また、糖層を作っている袋が丈夫な事も電子顕微鏡で証明されました。旨味の元であるアミノ酸が多く含まれている糖層が、精米後も米の中に留まるこの構造が美味さの秘密としてあり、この事から、お米によって最適な精米歩合があり、一概に8分搗きや標準精米でその栄養価を計れないという見解になりました。
この他、でんぷん細胞内のでんぷん粒は、山地のコシヒカリの方が平場のコシヒカリより小さい事も明らかになりました。でんぷん粒が小さい程、炊き上げたときに細胞膜を壊す事が少ない為、これも食感や美味さの理由となっています。
当店のお米をお召し上がりいただいたお客様にはお分かりいただけると思いますが、ツルツルとした滑らかな口当たりが実感できます。
生産地域で違うのは登熟期間の気温に由来しています。登熟期間の気温は、食味に関係する米粒中のアミロース含有率等の成分とその組成に影響を与えます。
また地形土壌の面からみると、美味しい米が生産される地域は流域距離の長い川(
信濃川等 )の沿岸で粘土質があり、砂礫層が深いところに位置する地域、あるいは用水を受ける川の背後の山岳が高いか深いところで、土の色は茶ないし褐色を呈し、標高200m〜300m程度、水は清らかな山からの自然水を用いることが条件となります。
まさに弊社の仕入れ場所に該当する要素であり、アミロース含有量他、土壌を形成する母材の違いが美味しさに大きく影響しています。
最後に、地球温暖化も進み、あと30年もすると日本はフルーツの生産に最適な環境になると言われています。このことを鑑みて、美味しい国産米が頂ける年月もあと20年程ではないかと予想します。是非美味しいお米を味わえる今のうちに、思う存分味わって頂きたいと思っています。